出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2012/04/08 04:02 UTC 版)
(crater から転送)
クレーター (crater) とは、天体衝突などによって作られる地形である。典型的には、円形の盆地とそれを取り囲む円環状の山脈であるリムからなるが、実際にはさまざまな形態がある。主に隕石・彗星・小惑星・微惑星などの衝突でできるが、核爆発や大量の火薬などの爆発でも同様の地形ができる。
ギリシャ語で「ボウル」「皿」を意味する語が語源で、本来はメカニズムを問わず円形の窪地を意味し、火山の噴火口や、沈降による穴も含む。英語文献では、そのような意味での使用も少なくない。なお、コップ座の学名はCrater(クラテル)で、同じ語源である。
狭義には、天体衝突で形成された地形のことである。1609年にガリレオ・ガリレイが、月面を天体望遠鏡で観察し、多数の円形の凹地を確認し、クレーターと命名したのが始まりである。成因を明確に示したいときは衝突クレーター、インパクトクレーター (impact crater) と呼ぶ。またこの意味で使う場合は、「円形の窪地」という本来の意味ではクレーターと呼べないような形状の地形(たとえば地中構造、リムの一部のみ、など)も含めることが多い。窪地が明瞭なものは隕石孔(いんせきこう)と呼ぶこともある。
概論
クレーターにはさまざまな形があり、主に以下の要素により決定される。
- 天体の運動エネルギー。質量と相対速度で決まるが、質量・速度自体はあまり影響しない。当然、運動エネルギーが大きいほど、クレーターは大きく、深くなる。
- 天体の入射角。あまり影響しないが、極端に角度が浅いときのみ楕円形のクレーターができる。
- 表面重力。
- 大気の有無、あればその密度。
- 衝突地点の地質。
- 侵食の有無、性質、期間。
クレーターの形や大きさは衝突エネルギー(と衝突される天体の性質)だけで決まり、大きさなど天体自体の性質はほとんど関係しない。エネルギーさえ同じであれば、重い天体がゆっくり衝突しても軽い天体が高速で衝突しても、組成が岩石でも氷でも、あるいは衝突でなく核爆発でも、ほぼ同じクレーターができる。入射角も影響せず、非常に浅い場合を除き常に円形のクレーターができる。クレーター研究の初期にはこのことが十分に理解されておらず、月のクレーターが全て円形であることが、それらの原因が天体衝突でないと主張する根拠にもなった。
構造
- クレーター底
- クレーターの内部の平らな部分。非常に小さなクレーターは、平らな底を持たない。
- 縁(クレーターリム)
- クレーターの周囲を取り囲む盛り上がった部分。大きなクレーターでは山脈と認識される。
- クレーター壁
- クレーターの底から外部へ向かう時の急激な立ち上がり部分。縁の内壁。
- 中央丘
- クレーター中央部に見られる丘状の凸部。大きなクレーターに見られることが多い。
- 光条(レイ)
- クレーターから放射状に延びる明るくアルベドの高い(白い)筋状の構造。月など大気のない天体に多い。
- 洪水溶岩
- 大型のクレーターの底が溶岩で埋まって平原となったもの。氷衛星では岩石の代わりに氷で埋まる。
- 2次クレーター
- 衝突の噴出物が落下したことによる2次的なクレーター。
- 堆積物
- 地球や火星では、底が堆積物に埋没することがある。
形態
クレーターはその直径によって異なった形態を示す[1]。
最も小型のクレーターは、断面が単純なお碗形をしており、単純クレーターと呼ばれる。単純クレーターの直径と深さには比例関係があり、岩石天体の場合は直径のおよそ0.2倍、氷天体の場合は0.1倍の深さになる。
衝突の規模が大きくなるとクレーターの形態は複雑クレーターという埋め立てられた平らな底部を持つクレーターに変化する。このサイズのクレーターは中心に中央丘を持つことが多く、中央丘クレーターとも呼ばれる。クレーターの規模が大きくなると共に中央丘はより顕著になり、次第にリング状の構造を示しはじめる。このようなクレーターは中央リングクレーターと呼ばれる。さらに、最大規模の衝突では同心円状の複数のリング構造を持った多重リングクレーターが形成される。
クレーターの形態はある一定の直径を境に単純クレーターから複雑クレーターに変化するが、その値は月の場合は15 - 20km、水星では10km、火星では5km程度である。重力が強い天体は一般的に複雑クレーターが形成されやすくなる。また、地表を構成する物質の性質によってもこの値は変化し、氷天体では同程度の重力を持つ岩石天体と比較して複雑クレーターが形成されやすい。
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